鶏ガラスープって何?

料理番組などで、味付けの調味料として、砂糖や塩などと並んで、よく「鶏ガラスープ」という名前が出てきます。
そのまま聞き流してしまいそうですが、これ、いったいどんなものを指して「鶏ガラスープ」と呼んでいるのでしょうか。

本来なら、鶏ガラ、つまり鶏の骨を、野菜や海草などと一緒に長時間煮込んだものを指すはずですが、家庭の料理でわざわざ鶏ガラスープをそうして煮込んでいる方は稀でしょう。

そこで、簡単に憶測すれば、市販の「鶏ガラスープの素」と言われる、粉末や顆粒状の調味料を使いなさい、という意味で、料理番組の先生が言っているのだと思われます。

さて、その顆粒の鶏ガラスープって、何でしょう?

確かに、メーカーさんが鶏肉や骨を煮込んだものを加工して作るのでしょうが、現場での経験から言って、それだけで、鶏の「旨味」が簡単に取れるとは思えません。

市販の鶏ガラスープの原材料の欄を見ると、やはり、調味料(アミノ酸等)とか、酵母エキスといった、化学的に旨味を合成した添加物を加えていることが書かれています。
(酵母エキスは、分類上「添加物」では無いとされていますが、従来から書いてきたとおり、本質的には「添加物」以外のものではないです。)

こうした「添加物」を、堂々と「加えてください」と仰る先生方を、私は、尊敬は致しかねます。

こういう添加物の旨味というものは、その作用的に、素材の表面をいち早く化学的に覆い尽くし、原材料自体の旨味を隠してしまうものだからです。
それは表現を変えれば、素材を量的に十分に使わなかったり、調理方法が粗雑であったりすることを「カバーする」方法とも言えるのです。悪く言えば、「味の偽装行為」であるわけです。

添加物の化学的な旨味は、それを使う全ての料理の味を「同じ味」にしてしまいますが、それを「美味しい」と勘違いしてしまう人を増やすことにもつながります。

それは、いわゆる「味音痴化」を助長するだけでなく、本来摂れるはずの素材の栄養素も摂れず、本来味わえるはずの美味しさも味わないという結果にもつながります。

ですから、料理番組で推奨されているからと言って、添加物入りの鶏ガラスープの素などを使うべきではありません。
もちろん、添加物そのものなども、使ってはなりません。
何度も書きますが、使ってしまえば、それは「作り物の味」で覆われてしまうからです。

ですから、面倒でも、本物の「鶏ガラスープ」を使いましょう。でも、面倒ですね。
それなら、スーパーやお肉屋さんで簡単に買える「手羽先」や「手羽元」でもいいです。
それを料理の材料として加えてしまえばいいのです。手羽は比較的短時間で、旨味が出ますし、もちろん食べても美味しいですから。

とにかく「添加物は極力使わない」という考え方が広まれば、我々の食生活がいい方向に進むと、いつも思っています。

無添加への道のり (旨味素材の工夫)

やがちゃんキムチの全商品は、「食品添加物無添加」です。

保存料や着色料等はもちろん、アミノ酸・核酸等の化学調味料だけでなく、一般的に添加物とはされない「酵母エキス」や「たんぱく加水分解物」なども使っておりません。

「味」作りにおいて、人工的な合成物を使ってはいない、ということです。

ですが、別にこれは、ベジタリアン、ビーガンやマクロビオティック等の考え方に基づいているわけではありません。私自身は、日常生活においては普通の食生活をしていますので、添加物も結構摂っています。

≪やがちゃんキムチは、ビーガンやマクロビの考え方とは無縁です≫

 

ただ、当店の作る商品には、もちろんそういった化学合成物は使っておりません。

理由は単純です。

「本当の美味を追い求めた結果、気が付いたら無添加になっていた」のです。

決して「無添加にするべきだ」という考え方から出発したわけではないのです。

それはどういうことか、以下に書き連ねます。

私がキムチ業を始めたのは、身近に韓国出身の方が居て、その方が私が当時経営していた会社の商品一つとして、キムチを作ってくれたのが始まりです。

当時のキムチはそれなりに美味しかったですが、別段無添加ではありませんでした。
否むしろ、「え、こんなに入れるの?」と言うくらいに、大量の化学調味料(味の素やハイミー、ほんだし等)を使っておりました。
それでも結構売れたので、特に気にしておりませんでした。

ところが、その韓国出身の方が事情で帰国し、キムチ担当が居なくなって、私自身が受け継いで思いました。
「こんなに合成物を入れて、本当にいいものなのだろうか」と。

そこで、試しに、化学調味料をゼロにして作ってみたのです。
その結果・・・・まずくて食べられたものではありませんでした。あの白い粉たちを入れないと、こんなに腑抜けの味になってしまうのかと驚いたのです。

そこで工夫してみました。

味の素の旨味は「グルタミン酸ナトリウム」です。
そのグルタミン酸を多く含む出汁素材と言えば、昆布ですね。そこで、キムチのタレ造りの時に、たくさんの昆布を煮だして使ってみました。

結果、「あ、昆布の味がする」程度のものでした。微かに旨味が増えた感じがする程度です。
そこで、昆布の量を増やしてみました。2倍、3倍、4倍、5倍、10倍と・・・! 鍋に入りきらないくらいの量まで使ってみました。

入れれば入れるほど、タレの旨味は増します。
ですが、化学調味料のあの味の強さには遠く及びません。
憶測ですが、「味の素」1キロ分の旨味を昆布で出すには、おそらく100キロ以上の昆布が必要なのではないかと思えました。それくらい、化学調味料の味は強力なのです。

それならば、と考えました。
「旨味」の要素は、グルタミン酸だけでは無いだろう。他の要素は何かないのか、と。
そこで、和食の「出汁」の世界に顔を突っ込みました。

ありました、ありました。
グルタミン酸以外にも、イノシン酸は魚介類に、グアニル酸は干ししいたけ等に。コハク酸は貝類や酒に。そしてこれらを組みあわせて使うと、旨味が相乗効果的にどんどん増していくことにも気づきました。

そして自然に、こうした素材の使う量は増えて行き、量の組み合わせにも一定の法則があることが分かりました。
結果として、かなりの量の化学調味料の使用を減らせました。

ただ、ゼロにするとやはりどこか、物足りなくなります。「腑抜け感」がどうしても漂ってしまうのです。

いくら無添加でも、美味しくなくては失格です。

やはり、完全に無添加にするのは無理なのだろうか?・・・・いや、そんなことはない!
まだまだ、工夫の余地はあるはずだ。
そう、思ったのです。

そして、こうした「旨味」の側面以外にも、もっと工夫を重ねてみようと思いました。

出発点は、あくまで、「美味しさ」の地点です。
ゴールが、「完全無添加」の地点です。
それが決まりました。

だから、要は、美味しさの追求から入ったわけであり、思想や哲学的な「無添加至上主義」では無かったのです。ここが、他の無添加メーカーさんとの大きな違いだと言えると思います。

以下、次号に続きます。

※なお、このテーマについては、拙書「秘伝レシピ公開! 無添加で超美味を実現するとっておきの現場ノウハウ(アマゾン電子書籍・定価2万円)」に詳細に書かれています。その読者さん方のために、このブログでは細部にまでは触れられませんので、ご了解ください。

豚キムチを無添加で美味しく5分で作る方法は・・・?

先日家族と行ったある大型施設の居酒屋さんのような食堂で、「豚キムチ」をとりました。

メニューに鮮やかな写真が載り、いかにもおいしそう。しかも一皿480円とお安い。サラダなどの他のメニューもなかなか美味しかったので、期待しました。

ですが・・・。

うちのキムチを食べなれている家族は、少し口にしたきり、あまり食べませんでした。私も、最初の一口だけです。

ところで、ネットで「居酒屋 無添加」で検索をして見ますと・・・出てくるのが、ほとんどが個人経営らしきお店。やはり、効率を重視するチェーンの居酒屋さんでは、無添加の美味しい料理を一から出すのは無理なようです。

しかし、素材や味付けのタレを無添加にすれば、無添加メニューは簡単に出来ます。

「豚キムチ」はキムチと豚肉の炒め物の人気メニューですが、ほとんどの場合、キムチにも化学調味料が入っているし、味付けの調味料もほとんどすべてが化学調味料入りです。

ですから、最初の一口だけ「美味しい」と感じても、すぐに飽きてしまい、食後はべたべたと「化学調味料の味」がいつまでも残ります。

そこで、やがちゃんキムチを使ったらどうなるか。簡単に、無添加美味の豚キムチが出来てしまいます。居酒屋さんでも、ご家庭でも。

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レシピは「クックパッド」に上げました。5分で出来ます。居酒屋さんだけでなく、ご家庭の簡単メニューでもぜひどうぞ。「これはいつものと違うな」とご家族が驚きます。

なお・・別に大手居酒屋さんにうちのキムチやタレを売り込もうと思って書いているわけではありません。そんなに大量に作れません。

化学調味料は素材の味を消し去ります

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「鉄腕ダッシュ」という番組を良く見ています

本日のテーマは、「銚子の春キャベツ」でした。
今が盛りの、日本一のキャベツの産地。
この時期出回る柔らかな春キャベツの味わいは抜群。
柔らかな肉質とフレッシュな香りとマイルドな甘みが、たまりません。

生でも美味しいですが、サッと湯がくと、甘みが増します。

番組では、春キャベツとトマトを煮て、味付けして食べるレシピを紹介していました。
地元の方々から聞いたレシピなのでしょう。

そのレシピ・・・塩とかソースとかいろいろありましたが、最後に「調味料」とありました。

ここでいう調味料とは、間違いなく、「化学調味料」のことでしょう。

せっかくの春のキャベツ。トキオのメンバーがその料理を食べて、「おお、旨みがある!」というようなことを言っていましたが、その「旨み」が、化学調味料の旨みを含んでいるのは、間違いないですね。無念な結果です。

なぜ、そんな余計なことをするのでしょう

春のキャベツをゆでて食べてみて、それで、それ以上の美味しさが必要ありますか?

ある、と言うのであれば、その人は本当の美味しさの意味を知らないということになります。

はっきりと書いておきます

●一部の料理人は、化学調味料が「旨みの補填」に役に立つと思っていますが、それは大きな間違いです。化学調味料の味は、それを一粒でも入れてしまえば、本来の素材の味の補填など出来ようが無く、逆に素材の美味しさを殺してしまうのです。

●どんなに丁寧に下ごしらえした料理であっても、化学調味料をかけるだけで、すべて同じ味に染まってしまいます。化学的に調合された味にです。

●いやしくも料理人であるのなら、化学調味料を使うことは「恥」であると、強烈に自覚するべきです。

トキオのメンバーが「美味しい」と感じたのは、その化学調味料の味であった・・・のでしょう。

番組の意味も無くなり、農家の方々が懸命に育てたキャベツの価値を覆い隠すことになってしまう。
大変残念なことです。

化学調味料は素材の味を殺す・・・・心に刻んでおきましょう。

なぜ無添加なのか シリーズその1

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なぜ世の中には化学調味料が氾濫しているのでしょうか。

それには、理由があります。

昆布とかつおぶしのこと

昆布の旨味は、「グルタミン酸」です。アミノ酸の一種です。

これを昆布を使わずに人工的に作り出したのが、いわゆる「味の素」、つまりは化学調味料です。

また、カツオ節や煮干の旨味は、「イノシン酸」です。核酸の一種です。

これをカツオを使わずに人工的に作ったものが、いわゆる「ほんだし」、つまりはだし調味料です。これも化学調味料ですね。

化学調味料の「味の素」や「ほんだし」で、「だし」風の味は簡単に出せます。しかも、とても安く。
だから、ほとんどの加工食品では、それを使って「旨味のようなもの」を出しています。表示上は、「調味料〈アミノ酸等」となっているのは、9割以上がアミノ酸の一種のグルタミン酸、残りが核酸の一種のイノシン酸から成り立つ、「化学調味料」を使っているからなのです。

 

50倍以上の素材を使わなければならない

では、天然の昆布やカツオで、「味の素」や「ほんだし」と同じ強さの旨味を出すのには、どれくらいの量を使わなければならないのでしょうか?

ずばり、50倍以上です。100倍くらいかもしれないです。
何度か実験して、確認しました。感覚実験ですので、数値ははっきりと出ませんが、とにかく、50倍から100倍。桁違いです。
味の素10gと同じ強さの旨味を出すためには、昆布が最低500g必要になるということです。

 

コストで見れば、200倍以上!

これを価格で比べてみると、市販の味の素10gがおよそ10円。昆布500gがおよそ2000円。実に、200倍の開きがあります。ほんだしも同様です。

だから、普通の加工食品では昆布やカツオから、いちいちだしを取らないのです。
200分の一で、似たような味が出せるのですから。

ですが、こうした人工的な旨味で、本当にいいのですか?

それが本当の美味しさですか?

このことを、今後シリーズで語って行きたいと思います。