お客様と密になれ(コロナ禍が生んだ、本来のコミュニケーション)

コロナを契機に、お店に関する「口コミ」の形が変わってきています。

飲食店の場合も、広告が入る「食べログ」等の既製大型のものではなく、フェイスブック等で地域の市民が地元のお店を自発的に紹介しあうローカルなSNSが増えています。当然無料ですが、その影響力たるや、絶大なものがあると思われます。

地元で実際日々利用している人の自発的発信だから、信用度も注目度も高いです。
アマゾン等でよく問題となる「サクラ」的な投稿ではなく、リアルな店舗でリアルな消費をした、実在度100%の投稿だからです。

それと呼応するように、当店あたりの「通販」の場面でも、従来型の一方通行のネットでの「自動販売機的」な売り方より、お客様とのパーソナルな交信が確実に増えています。
ネットではなく、古典的な「電話注文」も増えていて、お客様の声を直接お聞きし、ご質問を受け、ご提案をし、商品の販売に至る形が蘇っているのです。

最近、店の側がインスタグラムの画像投稿やユーチューブの動画投稿を通じて商品販売をしようとする動きもありますが、そのようなもの以上に、実際のお客様の生きた声を通じてコミュニケーションを取る方がはるかに効果的であることは明らかです。

コロナがもたらした、いい影響の一つだと思います。

密になるな、ディスタンスを取れ、オンラインでつながれ、等々の暗黙の「同調圧力」が今世の中を被っていますが、その反動でもあるかのように、お客様と店との「密接な」つながりが見直されているのです。
いや、間違いなくこれは、反動でしょう。

人は、もともと群れて、触れ合い、顔を突き合わせて話し合い、自分の気持ちを伝えあう存在です。
コロナでそれを制限するのがあたかも「正義」のような風潮が出来ている中、こうした本来のつながり方が復活しているのは、間違いのない事実です。

我々小さな商人には、それは特に言えることです。
ものをこの手で作りお売りする立場から言うと、嘘偽りなく、一生懸命いいものを作り続ければ、お客様や身近な方がそれを強く紹介してくれます。

言ってみれば、口コミの強力化です。

お金を払って自社製品のアピールを絨毯爆撃のように「上から」繰り返したり、「一方的に」ネット広告で強引にホームページに誘導したりする必要はありません。

上から、一方的に、ではなく、「お客さんが自発的に」、「お店とお客さんが相互にフラットに」という動きこそ重要なのです。

お店が自分で「これはいいよ!」と発信することよりも、お金を払ってそれを利用してくださったお客さんという「他者」が、無償で自発的に「これはいいですよ!」と言ってくれた方が、はるかに効果的であることは、言うまでもありません。

これこそ、純粋なる「口コミ」の発生なのです。

そして今、そのような純粋な「口コミ」が実際の販売につながる割合が、コロナ禍の中で急速に増えているのです。

口コミが発生してくれた商品を売るのは、容易です。

上記のように電話注文も来れば、ネット知識が無くてもすぐに売れる「メルカリ」のような場でも売れるし、飲食業でしたらMENUでネット注文も受けられるし、Uberや出前館でデリバリーも出来るし、ネット通販も「BASE」のような仕組みで、無料で世界相手に売ることも出来ます。
お客様の側から「いい商品だ」と太鼓判が押された商品は、もう、売り方はいくらでもあるのです。これからも次々にいいシステムが現れて来るはずです。

以前のように、「SEOが出来ていなくてはだめだ」とか「食品は楽天で、スペック商品はアマゾンで」とか、「動画や音声で誘導しなくてはだめだ」とかいうような「セオリー」は、もう全く通用しないようになって来ます。

そのうち、SNSとショッピングサイトの垣根も無くなると思います。

だから、「いかに売るか」という発想自体がもう必要なくなり、「いかにいいものを作り続けるか」、の方がはるかに重要になると思います。HOWよりWHATの時代に急激に向かって来たのだと実感しています。

メディアでもない、広告会社でもない、一般のお客さんのほぼ全員がスマホを持っていて、お店を実際に利用して「取材」し、画像を撮り、自由に感想を発信するのだから、それによるいい口コミを広めてもらうためには、「いいものを作る」ことが一番の近道なのです。逆に悪い口コミもすぐに広まります。

もう、売り方のコンサルテーションは要りません。
それより、いい商品を作る「職人」の我らの「腕」が今まで以上に問われるという時代に入ったのだと思います。

そう、コロナの影響で、「職人の時代」が早くやってきたのです。

コロナも、あながち悪い影響だけ残したわけではないのです。もともと不要でありながら膨らんだ様々の要素が一気にはがされた、という表現も出来るでしょう。

本当に世の中の人が必要とするものの情報は、テレビやマスコミにはありません。
Youtubeの動画の中にもありません。
何故なら、こういったものは「売る側の立場」から作られた情報だからです。

本当に必要な情報は、商品そのものの中にあり、それを実際に体験したお客様の経験談の中にあります。
お客様の側から発信される情報こそ、宝物なのです。