《無添加でも美味しくするにはどうしたらよいか》
添加物でも、たとえば、豆腐におけるニガリ、ハムにおける亜硝酸のように、「その商品を成立させるためにどうしても必要」なものはあります。
添加物を多用するメーカーは、そういうことを引き合いに出して、「添加物は必要なのだ」という議論をよくします。
しかし、それはごまかしに過ぎません。
本来不要なものは、絶対に入れるべきではないのです。
殊に、添加物を多用して最後に味の調整をするために入れる「調味料(アミノ酸)」が、最大の難敵です。
他の添加物は、保存性などの「機能」を強化するために入れますが、調味料(アミノ酸)は、味を良くするために入れます。
食品メーカーとして、この行為は、邪道の中の邪道である、と考えます。
では、アミノ酸やそれに類する「たんぱく加水分解物」を入れないで、加工食品を美味しく作るにはどうしたらいいか。
答えは二つです。
●天然の素材をたくさん使う
●味覚のバランスに創意工夫を施し、美味の表現に最大限に努力する
1グラムの化学調味料と同じ味の強さ(呈味力といいます)を出すには、100倍の天然素材が必要です。
例えば、「味の素」という化学調味料の1グラムに相当する昆布の旨味(グルタミン酸)を出すには、100gの昆布を煮出す必要があります。
コストにすれば、味の素なら1円以下。昆布なら300円以上はします。
しかし、「無添加を貫く」ためには、ここで味の素を使ってしまってはいけません。
1キロ使おうが1グラム使おうが、それは同じ「有添加」になるのです、。
無添加にするためには、ゼロにしなければいけないのです。
そこで、「創意工夫」をする訳です。
味つくりに必要な感覚とは、言葉を変えれば、「バランス感覚」です。
「甘い」「苦い」「酸っぱい」「しょっぱい」などの味覚を、どうやって食品の中に配置するか。
これに腐心して、日々試作を繰り返します。
また、日本には特有の「だし」の伝承文化があります。
これを利用しない手はありません。
たとえば、昆布と一緒にカツオを煮出せばどうなるか。
カツオのイノシン酸と昆布のグルタミン酸は、一緒になると呈味力の「相乗効果」で、旨味が倍加すると言われてます。
どれだけ倍加するかは、工夫次第。
こういったところを、プロの職人は何年も考え、研鑚し続けているわけです。
1グラムでも化学調味料を使用したら、それは恥である、という意識を持つことが先決です