和食かんざに脱帽

美味しいものは、確実にある。

6月某日、千葉県野田市の「かんざ」という和食のお店に行きました。

前の週に行くつもりで予約電話を入れたら、「満席で申し訳ありません」と丁寧に謝罪をしていただき、1週間待って、ようやく席を確保。

野田の市街からかなり離れた、田園地帯にそのお店はあります。外目には普通の農家。ですがその中で頂いた料理は、心を揺さぶられるものばかりでした。

 

頼んだのは、和食弁当御膳と、カニクリームコロッケ御膳。どちらも2200円。
和食弁当の、お造りに驚く。
ぶり、鯛、サクラマス。分厚い。口に入れると弾力がある。今の今まで生きていたのではないかと思えるほどに、新鮮。しかも、盛り付けがあざとく無く、小さく深い椀に重ねてあるのだが、椀の底にワカメと茗荷と生姜が敷いてある。それを魚と一緒に食べさせるように、無造作に盛り付けてあるのが、なおいい。

何かの魚の肝の煮つけ。苦みと旨味が優しく調和。
手作りの数種の練りもの。よほど丁寧に練り上げなければ、この滑らかさは出ない。もちろん、出汁の味付けだけの無添加。
ひじきの煮つけ。糸こんにゃくの白和え。優しい、柔らかな味付けで、しかも奥深い旨味。

ご飯。小粒で、粘り気も旨味も満点。毎日自分の店でコメを炊く僕も白飯には一家言あるが、これは美味しい。非常に美味しい。おかずとの比率もいい。おかずが終わるころに、ご飯も終わる。

うまい。

カニクリームコロッケは大好物だが、これほど柔らかでクリーミーで、カニの自然の味わいに満ちたコロッケは初めて食べた。

赤だしの味噌汁も深い。実に深い。
自家製のお新香もいい。お新香だけでも食事ができると思えるほど、食感と野菜の旨味が生きている。

最後にデザートの、小豆のムースにも驚く。
和のデザートの一つの極致ではなかろうか。
それが、何の衒いも無く、さりげなく出てくる。もっと、もっと食べたい。

これで一食2200円とは。

これを作ってくれたご主人はさぞ優れ者だろうと、会計の時に挨拶したいなと思っていたら、先にこちらを待っていてくださいました。

「畑の中の懐石料理屋 かんざ」 オーナーシェフ 石原喜之氏。
柔和な表情ながら、眼光に鋭さが垣間見える。
聞けば、この地に根を下ろして15年。
海鮮素材は北海道から空輸し、野菜は敷地内で自分で育てているとのこと。

この人は、出来る。
帰りに車に乗り、こちらが出発するまで、玄関から見送ってくださいました。こんな美味なるものを出していただいて、恐縮至極。

今日も一つの芸術に出会いました。

味の世界は、果てしなく広く深いですね。