魚は頭から腐る

30年近く前の韓国で

キムチ業を始めて間もない1990年代のころ、私は何度も韓国に渡り、唐辛子やチャンジャの原料を探して歩きました。
当時は今のように、韓国食材が日本で十分に流通していなかったから、本場韓国で探す必要があったのです。

韓国語がわからない私は、いつも現地のガイドさんを頼み、車も運転してもらっていました。

ある時、市場回りでソウルの裏町を走っていたとき、急に白バイが私たちの乗った車の前に割り込み、停止させたのです。

運転していたガイドさんが車の運転席の窓を開けると、白バイのお巡りさんが覗き込んで何事か言いました。

するとガイドさん、猛烈な勢いで言い返し、大声を上げ、怒鳴ったのです。

しばらく言い合った後、お巡りさん、そのまま諦めたように白バイに乗って走って行ってしまいました。

呆気に取られて見ていた私が「何があったんですか?」とガイドさんに聞くと、驚く内容の返事がありました。

「スピード違反だから金を払え、というんですよ。正式な罰金じゃありませんよ。警官が自分で懐に入れてしまう金なんです。最近それが社会問題になってますから、私、言い返してやったんです。罰金なら払うが、切符をちゃんと切って、あんたの名前も書け、と。自分は直接あんたに金は一切払わない。切符をもらったら、それを警察に持っていって、あんたに賄賂を要求されたと騒いでやるから。それでもいいのか、とね」

ソウルオリンピックも終わってかなり経っており、すさまじい経済発展をしている「アジアの先進国」の韓国で、まだそんなことが起きているのかと、私は驚きました。

きちんとした先進的法治国家である日本では考えられないことだな、と思ったのです。

今から、30年近くも前のことです。

先進国家日本では・・・・今・・・

その、「先進的法治国家・日本」という言葉は、確かにそのころの日本には当てはまったと思います。

ところが、30年経った今。わが日本。どうでしょうか?

まさか、と思うような政治や行政の腐敗らしきニュースが、最近後を絶ちませんね。

しかも、政治や行政の最高位の方が関わっているのでは、とされるニュースが多いのです。

魚が腐るのは頭から

魚は頭から腐る、と言います。

しかしながら、まだまだ、実際の我々の日常はいたって正常であるとは思います。
腐った魚は、まだ普段は見ていない気がします。

どうか、今後もそうでありますように。

本当に魚が腐った国では、無添加キムチも、キムチ作りの哲学も、何の役にも立たないとされてしまうことになるのでしょうから。