息子が、漢字検定にトライ。
会場まで付き合って、試験の1時間の間は、手持ち無沙汰で、近所のスーパーをブラブラ。
書籍売り場に入ったとき、すでに30分が過ぎていましたが、浅田次郎の新作に目が止まり、立ち読み開始。
浅田次郎・・・・。
私に読書の楽しさを教えてくれた人は、この人かもしれません。
もともと文学青年だった私も、今の仕事に入ってからは、長い間小説などには触れていませんでした。
それが、たまたま読んだ「プリズンホテル」に夢中になり、以後、浅田作品を次々と。そして、他の作家にまで手を伸ばし、文学中年の仲間入り。勢い余って、幾つか小説を自作までしました。
今日読んだ新作は、「月島慕情」。
やはり、すごい。
ここまでシーンを瞼の裏に描かせる作家は、浅田氏以外に居ないでしょう。あっという間に入り込み、読みきってしまいました。
時計を見たら、漢検終了時間が過ぎていました。慌てて会場に戻ると、既に息子が会場の外に出ていて、怒っている顔。
「遅いよ、パパ。どこ行ってたの。もう暗くなっちゃうじゃない」
「ごめんごめん、本読んでたから。どうだ、満点取れそうか」
「ダメ。どうしても書けない字があった」
「何だそれは?」
「おいる、って言う字」
「おいる?」
「年取るって言う字」
「ああ、老いる、ね。そんな簡単な字、書けなかったのか」
「パパ。パパだって立ち読みしてて、時間忘れたんでしょ。僕だって忘れちゃうことあるんだよ。パパ、老いたんじゃないの?」
ギャフン。
でもまあ、たぶん合格しただろうし、浅田次郎は読めたし、いい一日ではありました。
「月島慕情」のラストシーンには、夜空に浮かぶ月が出てきます。帰路空を見上げると、見事な下弦の月が輝いていました。
あ、そうだ。
本屋さんでの立ち読みは、いけませんよ。