永六輔氏が亡くなりました。
私が中学3年生の時の担任の先生が、ある時NHKの前を歩く永六輔さんを見つけ、勇気を出して駆け寄り、ご意見を伺った、ということがあったそうです。
そのとき先生は、「私には間もなく卒業する40数人の担任生徒たちがいますが、彼らにこれから何を目指して生きていけばいいか、アドバイスをお願いします」と訊いたそうです。
いきなりの唐突な質問を嫌がりもせず、永さんは真面目な表情でしばらく考え、こう仰ったそうです。
「生徒さんたちには、物事を自分でよく考える癖をつけるようにして欲しいです。常識を疑い、真実がどこにあるかを見極める力をつけるように、と」
この話は、もう40数年前の話ですが、非常に印象深く、今でもはっきりと覚えています。
その時から、「上を向いて歩こう」の作者であるこの永六輔さんのことが、私の記憶で今に至るまでつながっていきます。
特に近年、キムチを作りながら聴くラジオの番組で語る氏の真摯な生き方には、非常な感銘を受けて来ました。
あらゆることに教養が深く、言葉の使い方に厳しく、弱者に常に寄り添い、権力の横暴を批判する勇気を持ち、伝統文化に造詣を深くし、日本というものを誰よりも理解していた、「知の達人」であられました。
「知性的」とは、永さんの持つこの生き方のことだと思っておりました。
晩年、お体を壊しながらもラジオを通じて、反知性的な傾向を持つ権力に対する苦言を堂々と呈されてもおりました。一度もお会いしたこともなく、投書もメールも致しませんでしたが、深く尊敬しておりました。
ご逝去を悼み、ご冥福をお祈り申し上げます。
私と同様に、全国で永さんの死を悲しむ方々は、それぞれの道で、今までとおり真摯に進んでいくことが、ご供養になる道でもあると思います。
私は、これからも、よりよい商品を真面目に作り続けてまいります。