意思さえあれば道はできる

やがちゃんキムチの店舗で最近顕著な傾向があります。

メインの白菜キムチやサムゲタン等のほかに、ラー油、カレー、マーボ豆腐、スンドゥブ等の「サイドメニュー」にも人気が波及して、すぐに売り切れてしまうのです。
本来なら、中華屋さんやカレー屋さんが出すものですが、キムチ屋のうちが作るものが支持される・・・。理由は何だろうかと思いますが・・。

一つには、やはり、「美味しい」ですね。
そして同時に、「無添加」であることでしょう。

日本の中華屋さんやカレー屋さんで、アミノ酸その他の添加物と使わないところは稀有ですね。
何故使うのかといえば、間違いなくそれは「経済性」故です。
素材の味だけで満足な味を出すには、相当の濃度を伴わなければなりません。
そうすると、途方もない原価がかかるからです。

そこを、使うのです。
素材の味の特性や味わいの方向性をうまく組み合わせて、使うのです。
出来ないことはありません。
実際に当店は、すべて無添加で、キムチも、中華製品も、カレーもご好評をいただいています。

うちのメニューの特徴は、ヤンニョムジャン、コチジャン、オリーブ七味、醤油だれ、にんにくだれ、味噌だれ等の数種のメインのタレを自由自在に組み合わせて、新たな味を作れることです。
そのすべてが無添加ですから、出来るものも全部無添加です。

どの製造にも、一滴の水も加えない濃厚なものですから、味のメリハリがはっきりしていて、他のものとの差は歴然として来ます。

このことはお客さんが一番よくご存じで、これらのタレ自体を買われる方が最近は急増してています。うちのお客さんは、グルメレベルが高い方が多いのです。

こういう味をお出しして、少しずつ、少しずつ、じわじわとお客様が増えてくださって来ている状況の中で、当店は一切のPRや広告などはしていません。これは、社是です。
在庫処分や売り上げ確保のための安売りもいたしません。
するのは、無償で「おまけ」を出したりすることや、感謝の意味でたまに「増量」をすることくらいで、これも、うちの味をもっとご存じ頂きたい、という動機からです。

そんな当店にも、いろいろな営業や勧誘電話がかかって来ます。
ネットの大手モールなどからも頻繁にお誘いがあります。
ですが、全部お断りします。

うちは、うちだけの「やがちゃんキムチ」であって、仮に大手モールの傘下に入ってしまえば、その中の様々な縛りやルールによって、そのコンセプトが揺らぎます。
したくないセールを要求されたり、ポイントがどうの、ランキングがどうの、という話になります。
独立して営業する店舗にとって、わざわざネットのモール内で同業他社と競うことくらい、無意味で嫌なことはありません。ランキングを勝手につけられたり、賞を競ったり、とんでもない話です。
当店のお客さんは、うちの「やがちゃんキムチ」が好きで召し上がる。ザッツオール、です。それ以外の物事は全く望みません。

そんなことはありえませんが、仮に「ミシュラン」の星をくれると言われても、お断りします。ミシュランは、うちのお客さんではないからです。

どんな時にも、道はできます。
意思さえあれば、自分の前に道はできるのです。
その道を歩くだけ。固くそう思います。コロナの時代でも、同じでしょう。

話は全く変わりますが、学生時代の専門は「シェイクスピア」でした。

シェイクスピア劇の最高峰は4大悲劇などとよく言われますが、人生を生きる上での「深み」を考える最高峰劇と言えば、迷わず、「Measure for Measure」 邦訳名「尺には尺を」をお勧めします。

人間の不条理な裏表の真実を描いた「問題喜劇」で、これを理解すれば、これからの「コロナ時代」にどう生きるべきかも見えてくるかもしれないです。

和食かんざに脱帽

美味しいものは、確実にある。

6月某日、千葉県野田市の「かんざ」という和食のお店に行きました。

前の週に行くつもりで予約電話を入れたら、「満席で申し訳ありません」と丁寧に謝罪をしていただき、1週間待って、ようやく席を確保。

野田の市街からかなり離れた、田園地帯にそのお店はあります。外目には普通の農家。ですがその中で頂いた料理は、心を揺さぶられるものばかりでした。

 

頼んだのは、和食弁当御膳と、カニクリームコロッケ御膳。どちらも2200円。
和食弁当の、お造りに驚く。
ぶり、鯛、サクラマス。分厚い。口に入れると弾力がある。今の今まで生きていたのではないかと思えるほどに、新鮮。しかも、盛り付けがあざとく無く、小さく深い椀に重ねてあるのだが、椀の底にワカメと茗荷と生姜が敷いてある。それを魚と一緒に食べさせるように、無造作に盛り付けてあるのが、なおいい。

何かの魚の肝の煮つけ。苦みと旨味が優しく調和。
手作りの数種の練りもの。よほど丁寧に練り上げなければ、この滑らかさは出ない。もちろん、出汁の味付けだけの無添加。
ひじきの煮つけ。糸こんにゃくの白和え。優しい、柔らかな味付けで、しかも奥深い旨味。

ご飯。小粒で、粘り気も旨味も満点。毎日自分の店でコメを炊く僕も白飯には一家言あるが、これは美味しい。非常に美味しい。おかずとの比率もいい。おかずが終わるころに、ご飯も終わる。

うまい。

カニクリームコロッケは大好物だが、これほど柔らかでクリーミーで、カニの自然の味わいに満ちたコロッケは初めて食べた。

赤だしの味噌汁も深い。実に深い。
自家製のお新香もいい。お新香だけでも食事ができると思えるほど、食感と野菜の旨味が生きている。

最後にデザートの、小豆のムースにも驚く。
和のデザートの一つの極致ではなかろうか。
それが、何の衒いも無く、さりげなく出てくる。もっと、もっと食べたい。

これで一食2200円とは。

これを作ってくれたご主人はさぞ優れ者だろうと、会計の時に挨拶したいなと思っていたら、先にこちらを待っていてくださいました。

「畑の中の懐石料理屋 かんざ」 オーナーシェフ 石原喜之氏。
柔和な表情ながら、眼光に鋭さが垣間見える。
聞けば、この地に根を下ろして15年。
海鮮素材は北海道から空輸し、野菜は敷地内で自分で育てているとのこと。

この人は、出来る。
帰りに車に乗り、こちらが出発するまで、玄関から見送ってくださいました。こんな美味なるものを出していただいて、恐縮至極。

今日も一つの芸術に出会いました。

味の世界は、果てしなく広く深いですね。