化学調味料(うまみ調味料)使用は職人の恥

先日あるテレビ番組を見て、絶句しました。

食欲が出ずに栄養摂取がままならないある一流アスリートの食事改善で、ご飯に化学調味料を入れて炊いて、解決に導いた、というものです。

本来、ご飯自体にも旨みは十分あります。おいしく炊く方法は、古来いくつも提唱されています。

それでだめなら、炊くときに天然の出汁を入れるなど、工夫次第でおいしく炊く方法はいくらでもあります。
あるいは、一緒に食べるおかずにでも、食欲を湧かさせる方法は無数にあります。

それを、化学的に合成された旨味調味料の粉末を入れるだけで、間単に済ませてしまう。

なんという安易で、またある意味、なんと危険な方法でしょうか。

これをいつまでも繰り返していたら、味覚の異常をきたし、刺激物を好むようになり、理想的な栄養摂取とはかけ離れた方向に進むことは目に見えています。塩分過多で高血圧症を招いたり、糖分を過剰に摂って糖尿病になる可能性が大きくなることも考えられます。

まさに、本末転倒です。

ところが、後でわかったことですが、この番組のスポンサーは、化学調味料のメーカーさんでした。

笑えない、「大人の事情」だったのですね。妙な意味で、納得しました。

食材には、どんなものでも、もともと「味」があります。

その味をさまざまに組み合わせて、「料理」として作る。それは人間だけが出来る高尚な作業です。

さらに、日本には独特の「出汁の文化」があり、おだやかな天然の味わいを、料理の味わいの基調として使います。昆布、かつおぶし、にぼし、しいたけなどが、その代表素材です。他にも、いくらでもあります。

また、日本には、独特の「発酵調味料」群があります。

良質の発酵菌が活躍できる風土を持つ日本は、良質の「発酵調味料」の宝庫の地なのです。

日本酒、みりん、酢、味噌、醤油・・・・これらは、無添加で強い旨みを醸し出す重要な仲間たちです。これらの発酵調味料の優秀さは、他国にぬきんでています。これを利用しないわけにはいきません。

さらに、海に囲まれた島国日本には、百千の海産物を気軽に手に入れられます。

「海のもの」には、旨みが詰まっています。魚にも、貝にも、海草にも。
これを利用しない料理をするなど、私には考えられません。

出汁、発酵調味料、海産物。

これらを利用すれば、化学調味料など、使う必要などこれっぽっちも無い筈です。

使うとしたら、それはその職人さんの「失格」を意味します。

恥なのです。

無添加は、料理人として当たり前の鉄則。

これを日本の料理人の共通ワードとしたいですね。