NHKで、「キムチのトリセツ」という番組を見ました。
普段料理番組でも「あれ?」と思う部分があるNHKだけに、ある程度予想はしていましたが、やはり、キムチ屋として「唖然とする内容」が多い番組でした。
以下、それを簡単に書き並べます。
まず、キムチの「旨味」を、「グルタミン酸」と「イノシン酸」で説明し、市販のキムチには「グルタミン酸」が多いので、そこに「イノシン酸」を多く含む「かつお節」を加えれば美味しくなる、という前半の山場が、唖然とする部分でした。
何故か。
番組でいう「市販のキムチのグルタミン酸」とは、現実には「化学調味料」に頼っている部分だからです。
アミの塩辛がグルタミン酸を生む元だというくだりもありましたが、実はアミ塩辛は非常に高価で、スーパー等で扱う市販のキムチには少量しか使われずに、それを補うために、化学調味料(グルタミン酸ナトリウム等)が使われるのです。
原材料上は、「調味料(アミノ酸等)」と書かれている、あれです。
化学調味料は非常に安価で強力な旨味を呈するため、ほとんどの加工食品に使われていますが、もちろん、自然の食材ではなく、化学的に合成された添加物です。
こういった添加物は、人間の体では「異物」と認識されるので、強い刺激感を伴います。
それを「旨味」というのは間違っていて、「旨味に似せた刺激」とでもいうべきものなのです。
そして、その刺激感を持つ添加物入りのキムチに、「上からかつお節を振りかける」という行為。
これは、真面目に味を作っている人々の苦労を反故にしかねない、安易な行為とも思えます。
少なくとも、やがちゃんキムチに「かつお節」などを振りかけないで頂きたい。
そんなことをしなくとも、無添加で十分に美味しく作っております。
余計なことは、しないで頂きたい。
かつお節にだって失礼な話で、一概にかつお節と言ったって、様々な種類があり、使い方があり、出汁の取り方がそれぞれにあります。
そこはもう、職人さんたちが長年積み重ねてきた貴重な歴史があるわけです。
それを、ただ「スーパーのかつお節をかけろ」とは・・。
これはもう、化学調味料をかけると同じ発想の、安直なお遊び以外の何物でもないです。
真のキムチを、そしてかつお節を馬鹿にするような行為です。
「味作り」とは、「素材の旨さ」をいかに生かし、それを様々な技術で「下から」、あるいは「同時に」、或いは「時間差で」というように、様々の方向で調味を施して「新たな美味しさ」を生み出す行為であり、出来上がったものに何かをさっと加えて「ほら、メチャウマでしょ?」などとする行為は、まずは「お遊び」に過ぎません。
もちろん、ぱっと食べた目には美味しく感じるかもしれません。しかしそれは一時的なものです。
下味の段階からじわじわと積み上げた「静かな旨味」と比べたら、そういった乱暴な味付けはすぐに飽きを呼び、忘れ去れるものと思います。
一から苦心して無添加の味を作っている当店からすれば、間違いなくそれは、「邪道」に他ならないやり方だと、強く思いました。
繰り返しますが、やがちゃんキムチには、何も振りかけずに、そのままお召し上がりいただきたいです。
さて、番組の最後の山場の「簡単にできるキムチだれ」の件です。
スイカにもかけて、「美味しい!」と言わせていた、あのタレですね。
(ヒコロヒーさんは、あまり美味しくないと仰っていましたね。)
そのタレは、ナンプラーとかトマトとか、ニンニクとか、スーパーで買える素材で作るものだそうですが、一体だれがこんなものを思いついたのでしょう。
そこにはもちろん、アミエビも入っていませんし、量も雑駁にしか語られません。
それになにより、「さきいか」を使っています。
さきいかは、化学調味料のアミノ酸たっぷりの「おつまみ」です。
確かに「旨味」は強く感じさせる材料ですが、邪道中の邪道の、化学調味料入りということは明白。
平気でそれを使う行為。
全く、感心できませんね。
天下のNHKです。
全国で何百万人もが見たことでしょう。
それなのに、ちょっと器用なアドバイザーさんが考えた「キムチ」なるものをざっと写して見せた、それだけのものに思えました。
韓国でのロケの場面も多くありましたが、どこにでもあるような、「ざっーっと紹介する」ことでお茶を濁していただけのように思えました。
以上が、盛んに番組予告をしていた「キムチのトリセツ」の感想です。
当店は、今まで通り、自然の食材のみを使い、本格的な、自然の美味しさのキムチをこれからも作り続けます。