ですが、脱力をしている場合ではありません。
何とか、もっと画期的な旨味をもつ塩を見つけなくてはならない。
いや、見つからないのであれば、自分で作ればいいではないか。そうだ、自分で作るのだ!・・・そう私は思いました。
そこから、私の「塩作り」が始まりました。
最初は、築地市場や上野のアメ横に行って、昆布や鰹節や干しホタテなどをどっさりと買い込んでくるところからスタートしました。
それらを店の窯で煮て旨味を出し、それに塩を混ぜて、何時間も煮詰めて水分を飛ばし、固体に戻す・・。明け方までその作業を続けたこともあります。
それでも、どうしても塩の味が勝ってしまい、旨味が十分につきません。
塩を半分以上加わえると、せっかくの天然素材の旨味は、塩のしょっぱさの前に消え去ってしまうのです。
ところが、試しに市販の化学調味料を加えてみると、すぐに「旨味」を感じます。これには大きな悔しさを感じました。化学調味料の旨味の強さは、それほどに強烈なのです。
ですが、化学調味料を使う訳には絶対に行きません。あくまで無添加を押し通し、天然の材料のみを使って、十分に旨味を感じる塩を作り上げ、キムチ作りに利用するのだ・・その一心で、キムチ作りを終えた夜の工場で、来る日も来る日も「塩作りに」に没頭しました。
それから約1年半。
すでに超高級塩を作り販売していた友人M氏のアドバイスと協力も得ることができ、ついにレシピを完成させたました。2010年秋のことです。その塩なのです。M氏の力で、それを製品化してくれる大手の食品メーカーも紹介してもらえました。
M氏は現在、この高級塩を「彩湧塩」という商品名で販売されているのでぜひお試しください。
http://salt.co/
粒子の細かい食塩に、昆布、しいたけ、酵母、アサリなどの粉末を配合し、無添加でありながら驚くほどに旨味に満ちた塩。
ただし、原材料全てが非常に高価で、レシピを提出して製造委託したその食品メーカーさんから出された見積価格は、ケタが一つか二つ違うのではないかと思うほどの金額でした。
しかし、その塩で白菜を漬けてみると、どんな白菜や野菜でも、本当にしんなりと美味しく漬かります。
これは、まさに驚異でした。これは価格の問題を超越した問題だと思いました。
2011年初頭、とうとうその塩が入荷致しました。
そして、早速製造を始めたのが、全く新しい発想の製造方法で作る白菜キムチ。
今までと原料も方法も「別」のキムチ。「別物キムチ」と名づけたキムチだったのです。