この「別物キムチ」の製法は、それまでの白菜キムチの常識を大きく覆すものでした。
まず、従来は「安物キムチの作り方」と言われていた白菜の切り方の方法を、敢えて採用したことです。
それは、塩漬けする前の生の白菜を、敢えて「カット」してしまう、ということです。
この方法は、白菜を株のままで葉の一枚一枚の間に塩を振り、それに重石をして漬かり上がりを待つ、という韓国伝統の方法に比べて、非常に簡易的な方法で、手間もコストもかかりません。
そんな安直な方法を、なぜこの新開発の「高級キムチ」に採用したのか・・。
それは、開発したその「塩」の特製から、均一に白菜に行き渡らせるのには、それが一番いい方法だったからです。
通常、白菜をカットすると葉の繊維が断ち切られてしまい、そこに重石をすると、白菜の美味しさの成分も流れ出てしまいます。市販の量産キムチは、化学調味料を大量に使うことでその「味のロス」を補うという、いわば「邪道」の方法で製造します。
しかし、新開発したその「塩」を使うと、事情は全く一変します。
まず、重石をする必要がないのです。
昆布や椎茸の天然エキスを多量に含む塩の為、浸透圧が非常に強く、重石をしないでいても、あっという間に漬かってしまうのです。この現象には私も驚きました。
塩漬けして数時間で、しんなりと漬かり上がってしまいます。
これは、固い冬場の白菜でも、柔らかい春白菜でもそうです。白菜をカットして、その塩をまぶして、置いておくだけ。
それだけで、数時間後には白菜の塩漬けが出来上がってしまいます。
重石をしないので、カットした白菜を使っても、白菜の旨味が流れ出ることもありません。長年漬物を作り続けてきた私には、それは驚異の現象でした。