一枚の絵が人生を変える(ピカソがくれたキムチ屋の決意)

青の女

一枚の絵が人生を変える・・・

大げさな表現ですが、そのようなこともあります。

この絵は、ピカソの「青の女」です。まだ十代の青年のころに描いたそうです。

私が初めてこの絵を見たのは、数十年前。大学生だった私が進路に迷っていたときでした。上野の都立美術館での展覧会のエントランス付近で、突然この絵に出会いました。そのときの衝撃は、今でもまざまざと思い出されます。

ネット検索で見つけたこの画像よりはるかに青の色が鮮烈で、しかも、口紅の色が異様に映えていました。この絵の前で、30分は立ちすくんでいた記憶があります。それほど、強烈な絵でした。

そこに、迷いとかためらいとかいう要素は感じられません。こう感じたから、こう描く。まっすぐに描く。文句があるか。あっても描く・・・・ピカソのその傲慢とも云える姿勢が、真正面から伝わってきた気がしました。
それが原因かどうかは定かではありませんが、進路に迷っていた私は、困難な方の道を選びました。それが正解であったかどうかは、一生分かりません。ですが、間違いではなかったと思っています。

別に私は絵の専門家でも無く、絵画に造詣が深いわけでもありません。ずぶの素人です。

その後理由があって食の道に進んだ私は、やがて自分でキムチを創作するようになりました。

キムチについては当初は素人でしたから、キムチつくりには様々の苦労や迷いがありました。
そのときに、この「青の女」の衝撃感を、よく思い出したのです。

絵も、食べ物も、人の「嗜好」に類するものです。自分のキムチは、いってみれば、「味覚の美」に訴えるものでありたい。そう思いました。
絵が無くても、キムチが無くても人は生きていけますが、名画が無ければ人の人生はつまらなくなります。同様に、うちのキムチが無ければ食卓がつまらない、と思っていただけるようなキムチを作りたい。強くそう思いました。

中途半端だけはやめよう、と思いました。

そして、「うちだけしか作れないキムチを作ろう」とも思いました。

味や成分を粉飾したキムチは絶対に作りたくない、と思いました。

それが今、100%無添加の「やがちゃんキムチ」を生んだ原動力です。

「青の女」が無ければ、こうならなかったかどうかは分かりませんが、少なくとも、私の行動を大きく変えてくれた絵であることは確かです。