名刀は妖艶な美女の輝き

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林間学校から戻る息子を迎えに、上野駅に。

時間があるので、その前にちょっと美術館でも、と歩いてみると・・・・

今、美術ブームということで、建ち並ぶ美術館、博物館はどこも長蛇の列。
並ばずに入れるのはこの「国立博物館」の「常設展示」だけ。

同時開催の「興福寺阿修羅展」は、1時間待ち・・・・・。

600円を払って常設展示を見ましたが・・・・そこで出会ったのが・・・・・。

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三条宗近三日月刀。

10世紀平安時代。1000年以上前の作です。

国宝。

 

他の名刀も幾振りも並んでいましたが、これだけが何故か、周囲から浮き上がるように見えました。

引き寄せられるように近づいて、じっと眺めると、一歩も動けなくなります。

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10分も、いや、20分は、いや、小一時間、その場で立ち尽くしました。歩けないのです。

妖艶。幻のようでもあるし、それでいて、艶やか。

耳元で息を吹き付けられて囁かれ、背筋に恐怖と官能の感覚が同時に走る思い・・・・・・。

胸が高鳴り、視線は動かせず、ガラス面に頬を押し付けて、ただただ、見入っていました。

 

a 163その時、息子から、電話。

静まり返った展示室に着信音が響き、我に返りました。
いけない。電車の到着時間を過ぎていました。

ようやく刀から離れ、足早に館を出ようとして、出口近くでこの仏像が正面に。

飛鳥時代の菩薩坐像。

正面に立つと、

 「心を落ち着かせなさい」

と諭された気がします。

 

公園口の改札で、息子は口をとんがらせて怒って待っていました。

 「パパ、なに遊んでたの」

 「ごめんごめん。ちょっと綺麗なものを見ててさ」

と言うと、

 「我を忘れちゃダメだよ」

と怒られました。

 

   by やがちゃん of  やがちゃんキムチ