1) 無添加への長い道のり

無添加白菜キムチ「頂」

私は、もともとは酒屋でした。
スナックなどの飲食店に酒を配達していた若き日々、いつも、「もっと大きな店に酒を売りたい」とばかり考えていました。

ある日、居酒屋のママさんにご紹介いただいたのが、「くるまやラーメン」チェーンの社長さんだったのです。
飛ぶ鳥を落とす勢いだった社長さんに私はすぐに感化され、酒屋の枠を飛び越え、自ら「くるまやラーメン」のFC店の経営に乗り出しました。
あっという間に自分の店を5店舗に増やし、社長さんの後にくっついて歩き、日本中に出張したりするようになりました。

その流れで、ラーメン店のメニューを増やそうと考え、身近にいた韓国の方にお願いして作り出したのが、キムチだったのです。

その方のキムチは美味しく、日本中のくるまやラーメンにも採用されたりして、順調に売り上げを伸ばしました。
しかし・・・バブル崩壊とともに、状況は一変します。
くるまやチェーンは経営を縮小し、私が自ら展開していた5店舗も売り上げが落ちだします。

何とかしなければ、と思って始めたのが、「やがちゃんキムチ」の専門店チェーンでした。

この頃、キムチを作ってくれていた韓国人の方は帰国してしまい、私が自らキムチを作るようになりました。あらためて、当時の「やがちゃんキムチ」のレシピを見ると、驚くことばかりでした。
それは、「化学調味料だらけ」のレシピだったのです。

酒屋上がりだから、化学調味料の使用がどういう意味を持つかは、その時までの私にはあまり理解出来ていませんでした。
しかし、徐々に、それまで「美味しい」とされていた自分の会社のキムチの味が、実は化学調味料の美味しさであったことが分かるようになり、愕然としました。

要は、どんな食材を使おうが、最後には化学調味料でくるんで「人工的な味のお化粧」をしているのに過ぎなかったのです。

それが分かってからは、化学調味料の使用量を減らすことに腐心する毎日でした。
当時、製品重量の1%以上の化学調味料を使っていました。実はこれでも、一般的に売られている他社のキムチと比べると「低添加」ではあったのですが、それでもそれを一気に半減させ、その分、旨味の強い天然素材を増やしました。

最初からゼロにすればいいじゃないかと思われるでしょうが、そうすると、まさに腑抜けた味の「まずい」キムチになってしまうのです。

やがて、昆布や椎茸などの量をさらに増やし。アミエビやにんにくの量もグンとアップさせて、化学調味料使用率を0.5%から0.3%、そして0.1%、と減らしていきました。さらには、高価な牡蠣やホタテまで投入し、醤油や味噌などの和の素材も導入し、ついに0%の完全無添加にたどり着いたのです。そこまでに、15年の歳月がかかりました。

他社製品では考えられないオリジナルなレシピになったことは、言うまでもありません。

現在は、「やがちゃんキムチ」の工場内には、一粒の化学調味料も添加物もありません。

この間に身に着いた経験則から言いますと、たとえば10gの化学調味料と同じ旨味を出すためには、その50倍から100倍の量、つまり、500gから1kg程度の天然旨味素材(昆布や椎茸など)を使わなくてはなりません。

それは同時に、大変なコストアップになることを意味します。

そこを、様々の食材の選択や組み合わせなどの徹底した研究を続けた結果、無添加でありながら、今の旨味を持ったキムチを実現できたのです。

たとえば、昆布からだしを取るのと、そこに鰹節を入れるのとでは、だしの強さが歴然と違ってきます。これを、旨味の相乗作用と言って、同じ量でも旨味が4倍になると言われています。
そこに干し椎茸を入れると、さらに相乗作用が働き、旨味は8倍になります。
これは、グルタミン酸(昆布)、イノシン酸(鰹節)、グアニル酸(椎茸)という3つの旨味成分の起こす化学変化なのです。

このようなことを製造のあらゆる場面で研究実践した結果、お客様から圧倒的な支持を頂く「やがちゃんキムチ」の商品群が生まれて来たのです。

そしてその最終形とも言えるものが、白菜キムチ「頂」(いただき)です。

 

 

はじめに
1) 無添加への長い道のり
2) 白菜キムチが一番難しい・・・
3) キムチの要素は何だろう? 白菜と、唐辛子と、そして・・・
4) ええい、塩なんか自分で作っちまえ!
5) 常識を破れ! その1・・・カットして漬け、重石をしない!
6) 常識を破れ! その2・・・漬けあがり後の水洗いもしない!
7) 常識を破れ! 無添加ヤンニョムジャンのさらなる進化
8) 2011年3月11日の事
9) 頂のある毎日を!
後書き